【アルバム紹介】ジブリファンにも聴いてほしいユーミン、80年発表の異色作「時のないホテル」
ユーミンといえば? と聞かれて、イメージするパターンは大体2つあるように思う。
ひとつは、宮崎駿作品の主題歌などに代表される荒井由実時代の曲。
やさしさに包まれたなら【「魔女の宅急便」主題歌】
ざっと挙げてもこれだけの曲がある。
一方で40歳代以上の人には松任谷由実時代に莫大なセールスを記録した80年代後半からのいわゆるバブリーなユーミンも記憶にあるのではなかろうか。
私はアルバム・セールスのニュースをよく耳にした記憶があって
Delight Slight Light KISS('88)
LOVE WARS('89)
天国のドア('90)
このあたりがバカ売れしていた記憶がある。
私みたいな40代の人間にとってはユーミンと言えば、「私をスキーに連れてって」とか賀来千香子や佐野史郎が出てたドラマ「誰にも言えない」などの主題歌を歌ってる人、というイメージが強く、その頃20歳代の私はすっかり洋楽にかぶれ、流行りの邦楽なんて聞くかよ、とほぼ全くユーミンを聴くことなく過ごしてきた。
ところがここで宮崎駿の登場である。私の記憶では映画「魔女の宅急便」は上記のユーミンが凄く売れていたころの少し後、という印象だったが、「魔女の宅急便」の公開は調べてみると1989年であり、まさにアルバムセールス絶好調のころと被っていた。今売ってるCDも売れ、過去の名作にも脚光が当たり、で、まさにユーミン、この世の春状態。
一方、私自身は、といえば、宮崎駿の映画で荒井由実時代の名曲に改めてスポットライトが当たり始めたのもあるが、極端な洋楽かぶれがいったん落ち着き、はっぴいえんどなどを日本語ロックの初期のアルバムなどを聴き始める。そして、ユーミンの初期のアルバムが凄いらしい、とか、キャラメル・ママ/ティン・パン・アレーなど名うてのミュージシャンがバックで演奏してるらしい、てなことを聞きかじって、まったくテンプレ通りの行動ではあるが、そこで初めて荒井由実の「ひこうき雲」を聴いたりした。
今回の記事のテーマではないけれど、この「ひこうき雲」こそまぎれもない名盤で、ユーミンの唯一無二の才能、そしてアレンジ力、演奏力など邦楽のすばらしさを改めて実感した。
そんな訳で、私の世代であれば、リアルタイムでCDが売れまくっていたバブリーな頃のユーミンをリアルタイムで知り、また宮崎駿の映画で、荒井由実時代の名曲たちを後追いで聴いたりしているのではないか、という話なのだが、それでは結婚して松任谷由実名義となった78年から80年代中盤のユーミンのアルバムや曲を聴いている人ってどれぐらいいるのだろうか?
70年代の終わりから85年ぐらいにかけてユーミンはかなりハイペースでアルバムをリリースしている。アルバムのリリースの頻度を考えればこの時期の有名曲というのは意外と少ないのだが、それでも松任谷由実名義のアルバムでベストと思うアルバムに、この時期にリリースされたアルバムを挙げる人は結構多い。
ただ、私と同年代やそれより下の世代で、これらのアルバムを聴いてる人って、やはりコアなファンだけかな、という気がする。
さて、今回紹介したアルバムにたどり着くまで大分字数を要してしまったが、80年代初頭のユーミンって聴いたことないなぁ、って人におすすめしたいのが今回紹介する「時のないホテル」('80)
- アーティスト: 松任谷由実
- 出版社/メーカー: EMI Records Japan
- 発売日: 1999/02/24
- メディア: CD
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荒井由実時代のエバーグリーンな感じ、また今後のヒットメイカーとしての気配も見せつつ、アルバム全体としてはイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」にヒントを得たような無国籍なホテルでの出来事をハードボイルド小説風に描く、ちょっとした異色作。ユーミンが持つ独特な寂寥感が東欧のホテルを彷彿とさせ(行ったことはないが(笑))、聴くたびにいつも独特な雰囲気に包まれる。ユーミンって代表曲しかしらない、という人はいきなりこの辺りのアルバムから入って、通ぶってみるのもいいかもしれない。