【アルバム紹介】約30年振りの単独来日記念! ニュー・オーダー「テクニーク」(1989)
いやー、びっくり、というのが正直な感想。フェス以外に単独の来日公演なんていつ以来かとウィキペディアで調べたら、1987年以来ということだ。30年だよ、30年。
ニュー・オーダーの最近の歴史だけを取っても、93年のアルバム「Republic」以来、ほぼ解散の状況が続き、再結集後も紅一点のジリアン・ギルバートが抜け、最後にはベースのピーター・フックが脱退したり、と活動停滞とバンドメンバーの交代を繰り返している。
そんな中でも「Get Ready」(2001)、「Wating for the Silen's call」(2005)、前作セッションの中からの曲で構成された「Lost Silens」(2013)、「Music Complete」(2015)とまずまず新作は発表されている。
キャリアを重ねて、久々のアルバム発表となると、どのアーティストでも正直過去の遺産だけで作ったような出来のアルバムが多くなってしまうが、ところがニュー・オーダーはさにあらず。「Lost Sirens」が発表されたときは前作から8年経って、前作セッションの中からの曲しか出てこないということは、いよいよ完全な新作を期待するのは難しいか・・・と思っていたら「Music Complete」のような現役感バリバリのアルバムを作ったり、となかなか目が離せない。
そんなニュー・オーダーの中からおすすめの一枚を紹介したい。
ベタな選択だけどこのアルバムだろうねぇ。ニュー・オーダーを知らない友達にこのCD貸したら、ちょっと出来すぎな話ではあるが「これってベストアルバム?」と聞かれたぐらい、アルバム収録曲の完成度が高い。
今でこそ、ロックとダンス・ミュージックの融合など、当たり前の話で、もはや話題にも上らないが、少なくとも90年代は、そういったことがさかんに議論の対象となっていたし、またそれらを自然と融合させてみせたバンドも少なかった。
それをニュー・オーダーは80年代にこともなげにやってみせたのである。
そして、彼らなりのロックとダンス・ミュージックの融合の答えがこの89年に発表された「テクニーク」だ。
当時、ダンス・ミュージックのメッカともいえるイビサ島でのレコーディングであり、ディスコ・サウンドもふんだんに取り入れながら、一方でバンドとしてのサウンドは決して崩すことなくロックアルバムとしての側面も十分に残している。
私は常々傑作アルバムはそのメンバーで、その時代で、その場所で、という全ての偶然が重ならないと出来ないと思っているのだが、この「テクニーク」にはそれらが揃っている。
・中心メンバーであるイアン・カーティスを失ってゼロではなくマイナスからのスタートを切ったニュー・オーダー。しかし、87年頃にはかなりの人気バンドになっており、バンドは充実期を迎えた。
・シンセサイザー、録音技術の進歩によるロックとダンス・ミュージックの融合の可能性が見え始めた時代。
・そして、イビサ島という音楽的に最も最先端だった場所。
見事に3つの条件が揃っている。
そんな訳で、この80年代後半から90年代前半の時代の最先端の息吹が感じられるこのアルバムを聴いてみてほしい。