【アルバム紹介】フリートウッド・マック「噂」(1978)
家事をするときに大体音楽を掛けているんだけど、なんとなくこれといって特別聴きたいアルバムがないときは、Apple Musicのフェイバリット・ミックスを再生する。フェイバリット・ミックスはおそらく再生回数をカウントして、その中から曲をチョイスしているんじゃないかと思うのだが、このミックスを聴くと「ああ、そういえば2~3年前のヘビーローテーションのアルバムってこれだったなぁ。」と思わせる曲が流れてくる。
で、昨日はそのフェイバリット・ミックスの中でフリートウッド・マックの『Dreams』という曲が流れてきた。この曲は今日紹介するフリートウッド・マックの「噂」というアルバムに収録されているのだが、確かにこのアルバムは2年ほど前によく聞いていた。
「噂」について
フリートウッド・マック自体に特別な思い入れはないけど、このアルバムの傑作ぶりは凄いと思う。
この時代のアルバムは多かれ少なかれディスコミュージックの影響を受けているものであるが、この「噂」に関してはそんなイメージがない。むしろ割とプレーンなロックアルバムであり、派手なギターソロすらない。それでいながら、豊かなコーラスワークと曲の良さが際立っている。なので、今聴いても古さを感じさせないし、飽きが来ない。
「噂」の頃のフリートウッド・マック
このバンド、男性3人、女性2人編成のバンドなのだが、そのうち男女1組は離婚、もう1組の男女は破局、という人間関係の中(もうひとりは既婚者男性)、このアルバムが制作されている。そういうバックグラウンドを知ってしまっているせいかどうかは分からないが、サウンドの緊張感が凄い。
ただ、バンドというのはつくづく不思議なもので、バンドとしてはそれなりにキャリアを重ねてきたが、人間関係は崩壊しつつある、という時期に生み出されるバンドサウンドが一番タイトで表現力も豊かだったりする。
なので、このアルバムを聴くとついビートルズの「Let it be」や「Abbey Road」を思い出してしまう。
バンド内の対立関係から、ほかのバンドメンバーより、よい曲を作る、よい演奏をする、という意気込み。しかし、いざ演奏を始めると阿吽の呼吸でぴったり合う演奏が出来る。その結果として過去最高の作品群が出来上がる、という皮肉。
バンドが音楽にもたらす影響
最近はEDMを中心に、ボーカルは「feat.〇〇」みたいに曲ごとにゲストボーカルがいて、バンドの音楽があまり聴かれなくなったが、久々に「噂」を聴いてみると、長年同じ釜の飯を食ったバンドでしか表現しえないサウンドがある、ということに気づく。
今でもバンドはいるにはいるが、多彩な表現方法を求めて、アルバムの中でそれぞれのバンドメンバーの担当楽器が全然弾かれていなかったり、と、バンドというよりは音楽制作集団といったほうがより正確な気がするバンドが増えてきた。
そういう傾向を考えても、これからバンドメンバーが律儀に自分の担当楽器だけを演奏するバンドのサウンドというのはますます聴く機会がなくなるのかなぁ、と思う。
「噂」を聴けば分かるとおり、これだけ楽器の数も少ない中で、多彩な表現が出来る。今はエレクトリック・ミュージックばかりだから、逆にバンドサウンドを極めたら逆に面白いと思うけどね。ただ、それには相当の演奏技術と作曲・アレンジ能力が求められるが。